看護学生実態調査から見える学生たちの「悩み」や「ストレス」に向き合う支援のあり方

看護師を目指して懸命に学ぶ学生たち。その道のりは決して平坦ではなく、多くの学生が学業・実習・将来への不安など、さまざまな悩みを抱えています。全日本民主医療機関連合会(民医連)が実施した「2024年 全国看護学生アンケート調査」では、そうした“心の声”に焦点をあて、現場では見えにくい課題が浮かび上がりました。
この記事では、調査の結果をもとに、看護学生の置かれた状況や、私たち医療機関ができる支援のあり方を考察します。
1. 調査結果からみる看護学生の深刻な実態
全国37都道府県の看護学生955人から回答を得たこの調査では、学生たちが直面する厳しい現実が明らかになりました。 特に経済的な困窮は深刻で、学業との両立に苦しむ姿が浮き彫りになっています。
経済的な困窮
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厳しい世帯収入:
回答者の約半数が世帯年収380万円未満でした。 これは、物価高騰の影響を直接受けやすい収入層であり、多くの学生が経済的な基盤の脆弱さに悩んでいることを示唆しています。 -
仕送りの減少:
親からの仕送りや小遣いを「受けていない(0円)」と回答した学生は6割にのぼります。 さらに、一人暮らしの学生に絞っても、半数以上が月2万円未満の援助で生活している実態があります。 -
高い学費と奨学金への依存:
約8割の学生が学費を「高い」と感じています。 実際に7割の学生が奨学金とアルバイトを両立しなければ学校に通えない状況です。 奨学金を必要としている学生は約9割に達する一方で、「返済が不安で借りられなかった」という声も4割以上あり、必要としている支援を受けられていない現状があります。

学業を圧迫するアルバイト
常態化する労働:
87.6%もの学生がアルバイトをしており、週3日以上働く学生が6割、中には週5日以上とほぼフルタイムで働く学生も1割存在します。学業への支障:
約7割の学生が、アルバイトによる睡眠不足や疲労蓄積で「学業に支障がある」と回答。 具体的には、「講義中の居眠り(306人)」や「テスト勉強する時間がない(304人)」、「睡眠不足による疲労蓄積と集中力低下(289人)」などが上位を占めました。切実な声:
自由記載には『命に関わる大切な職業なので、アルバイトではなく勉強に集中したい』といった切実な声も寄せられています。

もし学費が無償になれば「学習環境の改善(36.9%)」や「アルバイトを減らす(35.7%)」に加え、「家族の生活費の補填(32.9%)」という回答も多く、自身の学びだけでなく、家族の生活まで支えようとする学生の負担の大きさがうかがえます。
2. 看護学生を取り巻くストレスの構造
看護教育は専門性が高く、知識と技術、さらには高い倫理観も求められます。 そのため、多くの学生が「理想」と「現実」のギャップに戸惑い、自信を失いがちです。
こうした学業の負担に加え、調査で明らかになった経済的な困窮が、学生たちをさらに追い詰めています。生活費や学費のためにアルバイトの時間を増やさざるを得ず、それが睡眠不足や学習時間の減少を招き、結果として学業への集中力を削いでしまうという悪循環に陥っているのです。この状況は、学生個人の努力だけで乗り越えるにはあまりにも過酷です。

3. 私たちができること
看護学生の抱える悩みやストレスは、多くが「一人では解決しきれない」ものです。 だからこそ、受け入れ側である医療機関が、教育の場として温かく学生を迎え入れ、支え合う環境を整えることが求められています。 尼崎医療生協病院の看護部では、学生たちが安心して現場を経験できるよう、以下のような支援や取り組みを行っています。
- 実習中の不安に寄り添う“対話の風土”
実習中は誰しも緊張し、ミスを恐れて縮こまりがちです。 私たちは、学生が「分からない」「困っている」と素直に言える空気づくりを大切にしています。 看護師や指導者が積極的に声をかけ、小さな悩みにも耳を傾け、失敗を責めずに一緒に考える姿勢を貫いています。
- 年齢の近い先輩からの「体験に基づいたアドバイス」
新人看護師や数年目の若手看護師が、自らの学生時代の体験をもとに、不安や疑問に寄り添う時間を設けています。 年齢や立場が近いからこそ話しやすく、「あの時、自分も同じことで悩んでいた」という共感が、学生にとって大きな安心につながります。

- 病院見学・インターンシップで“リアルな現場”を知る
就職後の自分をイメージできないまま不安を募らせる学生は少なくありません。 私たちは、実習とは別に、気軽に現場に触れられる病院見学やインターンシップの機会を定期的に提供しています。 患者さんとの関わりやスタッフの雰囲気を知ることで、「ここなら頑張れそう」と感じてもらえることを大切にしています。
- 経済的不安に対応する奨学金制度と就職サポート
調査結果からも明らかなように、「学費や生活費」は学生生活の大きなストレス要因です。 当院では、看護学生向けの奨学金制度を設けており、進路に関する相談や将来設計に対するサポートも行っています。 経済面・就職面の安心が、学業への集中や心の余裕にもつながると信じています。

- 働き始めてからも続く“育ち合い”の仕組み
学生時代の悩みは、就職後にも形を変えて続いていくものです。 当院では、新人看護師への継続的なサポート体制を整えており、「一人にしない」「一人で抱えさせない」を合言葉に、チーム全体で成長を支え合っています。 学生として来てくれた人が、安心して働き続けられるよう、育成の循環を大切にしています。
4. おわりに
「看護師になりたい」と願う学生たちが、学びの過程で悩み、傷つき、迷ってしまうことは珍しくありません。 しかし、それは成長への通過点でもあります。 その過程を誰かがそっと支え、安心を与えることができれば、未来の看護はもっと温かなものになるはずです。
私たち尼崎医療生協病院は、そんな“見えない声”に寄り添い、学生たちの背中をそっと支える存在でありたいと願っています。

就職祝い金について
当院では、(紹介業者を介さず)直接ご応募いただき採用に至った場合、就職祝い金を支給します。

看護師・助産師 | 20万円 |
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准看護師 (正看護師の資格を取る意思のある方) |
10万円 |
※正職員(フルタイム勤務)の方、50歳未満の方が対象です。
※紹介業者を介した場合は対象外になります。