アレルギーの話
アレルギーの話
尼崎医療生協病院皮膚科 玉置昭治
「先生、私はアレルギー体質です。」「何に対してアレルギーがあるのですか?」「・・・・・・」
「アレルギーを起こす薬はありませんか?」「薬にアレルギーがあります。」「何と言う薬ですか?」「・・・・・」
外来で良くかわされる会話です。こういうのもあるでしょう。「先生、原因はなんですか?」「アレルギーやな。」「アレルギーですか、そしたら、しゃあないなー」私達医者の中にも原因不明の場合や原因が分かっていても説明しにくいような時、説明しても分かってくれない時にアレルギーという事で逃げてしまうような事があります。かくてアレルギーのあると思っている人が増え続けるという事になります。
アレルギーとはどんな物
アレルギーによって起こる症状は非常に多彩です。蕁麻疹、湿疹、喘息、ショック、アレルギー性鼻炎、薬物アレルギー等は良く知られています。頭痛、肩こり、腹痛、下痢、嘔吐等も起こります。一見アレルギーと関係無いと思える様な肺炎や高熱を起こす場合も有ります。この様に多くの症状がアレルギーで起こりますので、原因が分かりにくい場合に「アレルギーやな。」で済ますことが有るわけです。
アレルギーとは原因が有るもの
アレルギーの原因や起こり方、症状等に対する考え方はここ数年の間に免疫学の進歩とあいまって格段に進歩しました。アレルギーと言う語は決して分からない物の代名詞ではありません、アレルギーを起こす原因が有るはずです。いわゆるアレルギー体質でもアレルギーを起こす原因と成る物はそれ程多い物では無く、多くの場合は数種類位迄のことが多く、多い場合でも十数種類です。薬に対するアレルギーでも同じことが言えます。ですから必要な事は自分のアレルギーを起こしている原因は何か、アレルギーがあって使えない薬は何という薬か知ることが大事です。
アレルギーの原因の調べ方
症状をよく観察しどういう時に起こるか、食べた物、飲んだ薬、季節等より原因に成りそうな物をピックアップします。症状に合わせて蕁麻疹なら原因に成りそうな物を皮膚に注射して15分後に判定する皮内テスト、湿疹や薬疹なら皮膚に2日間張りつけて反応をみるパッチテストという検査法があります。原因に依ってはもう一度食べたり、飲んだりしなければ分からない物もあります。
はじめからアレルギーのある人はいない
初めて食べた物でアレルギーが出た、初めての薬でアレルギーが起こったと言う人がいますがこういう事はありません。アレルギーが起こるにはアレルギーを起こすIgEや感作リンパ球が作られる必要があります。これらが作られるには早くて5日かかりますので初めての物ではアレルギーが起きないのです。初めて食べた食物、薬でアレルギーが出たように見える場合がありますが、これは以前に意識せずに食べたり、飲んだりして体にIgEや感作リンパ球が出来ていた為に症状が出たものと考えられます。アレルギーを起こすものは体が何時までも覚えていてなかなか無くなりません。これは一度麻疹や風疹に罹ると抗体が出来て二度と罹らないのと同じ事です。
卵を食べたことの無い赤ちゃんの血液検査で卵の抗体が見つかることがあります。また、初めて卵を食べて蕁麻疹が出ることがあります。これは母親の母乳を介して卵の抗原が赤ちゃんに入って抗体ができている、アレルギーの準備が出来ているからです。
アレルギーと似た病気
アレルギーでないのにアレルギーと同じような症状を呈する疾患があります。消炎鎮痛剤による喘息や蕁麻疹、造影剤によるショック等はアレルギーと関係なく起こります。従って初めて使った薬で症状が出ることがあります。この場合の症状はアレルギーの症状と変わりませんので、よけいややこしくしているようです。
アレルギーの治療
アレルギーの治療ははっきり言って困難です。多くの場合は原因がはっきりすればそれから逃げるのが賢明です。薬疹を起こす薬が分かれば二度と使わないようにするとか、そばアレルギーだとそばを食べないのは勿論そば粉を使ったお菓子も食べないようにするとかのように原因を絶つ訳です。
そうは言っても原因を絶てない物が原因になっている場合があります。この場合は減感作療法といって原因になっている物を少量ずつ皮膚に注射して善玉の抗体を作ってアレルギーを起きにくくする方法があります。この方法は主に原因が埃や花粉のような吸い込まれる物が原因になっている場合に良く使われます。
食べ物のアレルギーの場合、覆面型アレルギーは食べ続ける事によって症状が出なくなります。この事を利用して食べ続ける事によりアレルギーの症状を抑える事もあります。
一般的に良く使われる方法は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤を内服する方法です。この方法はあくまでも対症療法ですから原因が続いている場合は内服を中止すると症状が再発します。
軽いアレルギーの場合は体調が良いと症状が出ない事もありますので充分睡眠を取り、好き嫌い無く食べて体調を整えておく必要があります。特に原因が食物の場合は料理の仕方、胃腸の具合に左右される事が多くみられます。