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小児アトピー性皮膚炎の治療

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小児アトピー性皮膚炎の治療

尼崎医療生協病院皮膚科  玉置昭治

新生児期・乳児期の初めの皮疹は何か

生まれたときからアトピー性皮膚炎ですという方がいます。しかし、生直後からアトピー性皮膚炎ということはありません。生まれてすぐに出てくる皮膚症状は新生児中毒性紅斑、新生児ざそう(にきび)などです。それに引き続いて乳児脂漏性皮膚炎、水晶様汗疹(あせも)さらに遅れて食べ物、よだれなどによる接触皮膚炎などが起こってきます。

乳児湿疹かアトピー性皮膚炎か

日本皮膚科学会の定義では「アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返すそう痒のある湿疹を主病変とする疾患で患者の多くはアトピー素因を持つ」とされています。乳児ではそれが2ヶ月以上続くことが診断基準です。

皮膚症状は乳児湿疹といわれる状態になります。じくじくした浸出性の紅斑,糜爛、丘疹が混在する病変です。この症状が2ヶ月以上続けばアトピー性皮膚炎と診断して良いといわれます。アトピー性皮膚炎と診断されると落ち込まれる人がいますが、乳児湿疹もアトピー性皮膚炎も皮膚症状は同じです。アトピー性皮膚炎といわれても悲観する事はありません。

子供のアトピー性皮膚炎の原因は

子供のアトピー性皮膚炎の原因は母親の子育て不安と考えています。新生児期、乳児期に最初にあげたような皮疹が出てアトピー性皮膚炎といわれて不安になっていることが多い。そしてアトピー性皮膚炎といわれたら治らない、不治の病のように思ってしまうことが原因の可能性が大といえます。そして不安は「食物アレルギーがアトピーの原因で、原因になるものは食べてはいけない」と、「ステロイド軟膏の使用」と続いていきます。

血液でIgEの検査が出来るようになったのが昭和53年ごろです。55年ごろから小児科を中心に食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因といわれるようになりました。何故そうなったかといいますと、「食物アレルギーがアトピーの原因です。血液検査で原因が分かりますから病院にいって検査をしてもらいましょう。そして、検査が陽性だから食べてはいけない」と食事制限を押し付けられるようになりました。なかには皮膚症状だけ見て検査もせずに「卵を止めましょう、牛乳を止めましょう。米を止めて稗や粟を食べましょう」という事態が起こりました。これが不安の第1点です。

病院に連れて行ったらステロイド軟膏をもらった。塗れば綺麗になるが、しばらく塗らなかったら出てくる、の繰り返し。そのうち知り合いからステロイド軟膏は恐いといわれて書籍やインターネットで調べてみた。一度でも塗れば地獄行きみたいなことが書いてあり、知らずに塗ってしまったことを後悔してパニックを起こしてしまう。不安の2点目です。

そんな人でもステロイドの何が恐いかを聞いてみても、はっきりと知らない人やなんとなく恐いと思っている人が多い。情報を集めすぎて未消化になっているとしか思えません。自分にとって都合の悪い情報には過剰反応をおこしているようです。

このような不安はどこから生まれるかというと、核家族化によってお爺ちゃんや、お婆ちゃんの知恵が生かされていない、子育て先輩の助言が受けられなくて書籍やインターネットに頼らねばならない点が一番重要な点と思います。

病院に連れていけば乳幼児医療費無料化の拡大により私に言わせれば無駄な検査がされます。RASTで卵白が陽性と出ると症状が無いのに、卵を食べられなくなります。単なる乾燥肌でもステロイド軟膏を処方される場合があります。

そんななかで正しい情報の発信元が少ないし、弱いという現実があります。

小児アトピー性皮膚炎の治療方針

脱ステロイド療法を言い始めた19年前頃は「アトピー性皮膚炎は大きくなれば自然に治る」と大部分の皮膚科医は言っていました。私は今でも多くは一歳まで、遅くとも小学校に上がるまでに良くなることが多いと思っています。皮膚を汚さなくなる、皮膚が厚くなりバリア機能が強化される、掻破・泣く以外の言葉で要求が可能になる事が要因と考えています。

しかし、1999年に私も参加した大阪府医師会学校医部会による大阪市の学童アンケート調査によると、アトピー性皮膚炎の既往のある学童は90年に行なった同様のアンケート結果と比較すると25.5%から28.9%に増加していることが分かりました。また、小学校入学までに4人に1人しか治っていないという結果でした。学童期に約半数は未治癒のままでした。私の医療現場での感じとアンケート結果の差は明らかではありません。

アレルギー性鼻炎、結膜炎、食物アレルギーなど他のアレルギー疾患も増加しています。これは子供の担うストレスの増加が原因といわざるをえません。2歳児の約半数が22時まで起きている(朝日新聞)のは異常ですし、重湯や野菜スープはどこに売っていますかと聞かれるような時代です。食材の変化、勉強、体を動かす遊びの減少、集団活動が少なくなる、寝るのが遅いなどが影響しているのではないでしょうか。

私の治療で一番のポイントは母親の育児不安を取り除くことです。食物アレルギーの症状はアトピー性皮膚炎の症状と異なることを納得いくまで説明します。卵アレルギーがある(蕁麻疹が出る)乳児ではもちろん除去をしますが、その母親は「卵を普通に食べて、母乳で育てたほうが早く食べられるようになる」のではないかと考えて食べるように指導しています。今までの経験では酷い卵アレルギーの患児で母親が卵を食べて母乳をあげると哺乳している間に顔が真っ赤になってくるような例が2例だけありました。そういう方には残念ですがお母さんも止めてくださいとお願いしています。

一般的な注意は「甘やかすのではなく、甘えさす」を実行して、父親の育児参加を奨励します。早寝早起きして、バランス良くおいしく食べる。ご飯は家族揃っておいしく食べるのが一番です。石鹸・保湿剤を使ってスキンケアの指導もしますが、「寝る子は育つ、お肌は夜作られる」と当たり前の生活指導をします。「掻いたらダメ」、「早くしなさい」、「一寸待ってね」、「後でね」などは禁句としています。

私の前任地の淀川キリスト教病院にはステロイドを使いたくないと考えて来院される家族が多かったから、ステロイドの解説にも時間をかけます。アトピー性皮膚炎を抑えることが出来る薬は現在ではステロイドしかありません。しかし、ステロイドを使わなくても上記のようなことをしておればアトピーは自然に治ることを説明します。

ステロイド軟膏の副作用としては皮膚の萎縮・皮膚萎縮線状・ステロイドざそう・毛細血管拡張・紫斑・口囲皮膚炎、酒さ様皮膚炎などがあげられます。アトピー性皮膚炎など長期連用による副作用としては塗っても効かなくなるステロイド抵抗性や、ステロイドが止められないステロイド依存、急にやめると抑えられていたアトピーが悪化してくる中止後リバウンドがあげられます。しかし子供で長期連用の副作用を診る機会はごく少なく、逆にステロイドの使い方が少なすぎて効果が十分に出ていない人のほうが多いことを説明します。

私のステロイドを使う頻度は他の医療機関に比べて少ないし、使いたくない患者には使いません。騙してステロイドを混入するような詐欺のようなことは絶対にしません。しかし使うときは十分な効果が出るように使うように指導します。そして副作用の心配な人には2週間に1度くらい来院し、医師の診察を受けるように促しています。ステロイドを塗るだけでアトピー性皮膚炎が治るわけではありませんから、塗りっぱなしにしてはいけません。

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